私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「っ!?」

ビクッと身を震わせて目を開けると、自宅の天井が浮かんでくる。部屋はまだ薄暗く、時刻は朝七時を回ったところだった。カーテンの隙間から、柔らかな朝日が差し込んでいる。

また姉の夢を見ていた。あの家族写真を見てからというもの、姉との夢をよく見るようになった。のろのろと上半身を起こしたその時。

「起きたか?」

部屋の隅で低い声がしハッとなる。見ると石堂さんが壁に背を寄せ、長い足を伸ばして座っていた。そしてコーヒーの淹れ方の本を手にしている。

そうだ。昨日、石堂さんがうちに来て――。

昨日の出来事をゆっくりと思い出すと、断片的に記憶が蘇る。

――私、石堂さんが好きです。

そうだ……。私、どさくさに紛れて石堂さんに――。

あぁ~、私の馬鹿――!!

熱が下がっているのか、幾分思考回路がまともだ。それだけに昨夜の自分の告白が一層恥ずかしく思えて、私は布団に思い切り顔をうずめた。

「お前、なにしてんだ? 熱でついに頭がおかしくなったか?」

「違いますよ。こんなやつれた顔、見られたくないだけです」

かなり汗をかいたのか、喉が渇いてしょうがない。それに身体もベトついて不快だ。

「もしかして一晩中、ずっといてくれたんですか?」

「冷却材を買って帰ってきたら、うなされてた。そんな状態を置いて帰れないだろ」

「うなされてた……?」

頭に敷いていたタオルに触れると、まだ冷たさの残る冷却材がくるまっている。

「冷却材、ふたつ買ってきてやったから、それがぬるくなったら冷凍庫のものと交換しろよ」

「はい、何から何まですみません……」

昨日、一日中寝ていたせいか、頭がぼーっとする。寒気はもうほとんど感じない。
< 143 / 294 >

この作品をシェア

pagetop