私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
疲れた――。

石堂さんがよく座っている休憩室のソファにどさっと座る。一日中立ち仕事で身体が強張っているのがわかる。

――不味かったって言ったの。いつも淹れてくれる人はいないの?

またあの女性の言葉が脳裏に蘇る。

やっぱり石堂さんじゃなきゃ、だめなのかな――。

石堂さんには散々、下手くそだの武器用だの、それこそ不味いなんてことは何度も言われてきた。それなのにお客さんに「不味い」と言われる方がよっぽどショックだった。

情けないな――。

でも、これが現実なんだ――。

あのお客さん、なにがいけなかったのか教えてくれただけいいじゃない――。

自分で自分に慰めのような言葉をかけると、じわっと目頭が熱くなってついに堰を切ったように涙が溢れてきた。本当は仕事をしていても集中できずに何度も泣きそうになってしまった。けれど、店に雅人さんと怜奈を置いて自分だけ席を外すわけにはいかなかった。

「う、うぅ」

どうせ誰もいない。私は漏れる嗚咽を抑えることなく泣きじゃくった。

どうして石堂さんみたいになれないの――?

手を伸ばして、追いかけても追いかけても、石堂さんは手の届かないところにいる。
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