私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「店、悪かったな。大変だったろ」

今日、仕事をしている間、ずっと石堂さんの存在の大きさを感じていた。石堂さんがいなくても大丈夫と過信して、結局どん底を見た。

「お客さんに満足いくものが出せませんでした」

「……そうか」

「私、石堂さんみたいになりたくて、でも……私には無理――」

「それで? 無理だったら何だって言うんだ?」

石堂さんの厳しい口調に言い澱む。俯いて、唇をかみ締める。

すると……。

「こっち向け」

俯いていた視界にすっと石堂さんの両手が伸びる。そして私の濡れた両頬を挟むと、ぐっと顔を上げさせられた。

「や……」

こんな涙でぐちゃぐちゃになった顔なんて見られたくない。けれど、顔を背けようにも石堂さんはそれを許してくれない。

「お前、一人前のバリスタになりたいって言ってたろ? それって嘘か? だから俺の目を見られないのか?」

「ち、違いま――」

「だったら俺の目を見ろ」

顔を背けるのを観念し、恐る恐る力を抜いてゆっくりと視線を石堂さんに移す。

――ドクン。
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