私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「い、今はダメです。私……すごい変な顔してますから」

ぶんぶんと頭を振って、断固拒否する。こんな真っ赤でゆでダコみたいな顔見られたら、恥ずかしくて死にそうになる。しかも、自分からキスを迫って……。

「変な顔は今に始まったことじゃないだろ」

うぅ、なんてひどいことを……もう、何とでも言ってください――。

「こっち向けって」

「っ!?」

思い切り肩を掴まれて、ぐいっと無理やり後ろに身体を引かれたと思うと、私の唇に柔らかな感触がした。

……へ? な、なに――?

瞬きを忘れた私の目の前には、目を閉じる石堂さんの長い睫毛がある。

もしかして私――。

石堂さんにキ、キスされてる――!?

息もできず、私は石のように固まる。すると石堂さんがそっと身を離して、そんな私を見てクスリと笑った。

「お前がしたかったのって、これか?」

「な、ななな……げほっ!」

何食わぬ顔で言う石堂さんに、私は言い返すことすらままならず、開放された口から思い切り空気を吸い込むと弾みで噎せた。

「色気なさすぎ。キスする時くらい目、閉じろよ。それともなんだ、キスの仕方がわからないとか?」

石堂さんはにやりと笑うと、親指と人差し指で私の顎を掴んで、クイッと真っ赤になっている私の顔を捉えた。

「わ、私……」

石堂さんとキスできて嬉しい?恥ずかしい?それとも切ない?

様々な気持ちが入り乱れて、言葉にできない感情がいつの間にか目にいっぱいの涙となってこぼれ落ちた。
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