私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「ひと通りのことはできるようにもなったし、俺も忙しい」

「そう、ですか……わかりました」

純粋な気持ちをたぶらかすようなキスして、惑わせて、傍から見たら、きっと石堂さんは最低な男なのだろう。けれど、嫌いになれないのが惚れた弱みというやつだ。

「俺は、お前が思ってるほど、そんないい男じゃない」

自嘲するように石堂さんが笑う。

違う! 違う! 違うの――!

石堂さんの言葉を全力で否定するように、私は大きく首を振った。

「熱でおかしくなってたとしても、石堂さんのことが好きって気持ちは変わりません」

「……あっそ」

そうそっけなく言うと、石堂さんはソファから立ち上がった。

馬鹿と言われようが、ドジと言われようが……それでも私、あなたのことが好きなんです――。

石堂さん、どうしてキスなんかしたんですか――?

私は、何を考えているかわからない石堂さんのその背中に、心の中でそう問いかけた。

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