私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「里美、注文入ったよ、カフェオレだって」

「あ、はい!」

石堂さんの背中を何気なく見つめていると、他から注文を取ってきた怜奈から声をかけられてハッとなった。

「どうしたの? ボーッとして」

「ううん。なんでもない、んだけど……」

私が目で示すと、怜奈がその視線の方を見る。

「あ、あの人……」

「知ってる人なの?」

心当たりがありそうな怜奈の表情に、私はすかさず尋ねる。

「確か、スフラグループの本社の人だったよーな……前に一回うちの店に来て、その時に雅人さんがそう言ってた気がする」

「本社の人……?」

どうして本社の人が――?

店舗の視察……とか――?

石堂さんとなにやら話しているようだけれど笑顔もないし、どちらかというと雰囲気はあまり思わしくないように見える。

「っ!?」

目が合っちゃった――!

眼鏡のブリッジを押し上げると、その男性が私の方へ視線を向けた。私はなんとなく気まずさを覚えて目を逸らすと、カフェオレの準備に取り掛かった。

しばらくして、石堂さんがカウンターに戻ってくる。けれど、ため息をついて顔を曇らせ、どことなく不機嫌そうだ。
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