私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
一年でもっとも寒いと言われている一月も、もう終わろうとしている。
今日の空は一日中、分厚いどんよりとした灰色の雲に一面覆われていて、そのうち雪でも降ってくるのではないだろうかというくらい寒さが身にしみた。冷気が少しでも入ってこないように、グッと首元のマフラーを寄せて、スクランブル交差点の赤信号に立ち止まった。信号待ちをしている学生、会社員などみんな寒そうに身を縮こませている。
こんな寒い日は、どこかのカフェで温かいコーヒーでも飲みながら、ほっこりするのが一番だ。そう思い、交差点の信号が青に変わった時だった。
「あの、花岡里美さん、ですか?」
不意に後ろから自分の名前を呼ばれ、振り向くと……。
「あなたは……」
そこには今日、確か昼頃にスフラに来ていたあのインテリ風のビジネスマンが、少し息を切らせながら立っていた。
「すみません、急にお声かけしてしまって……私、スフラグループの水谷と申します。今日、スフラで接客して頂いたのですが……覚えていらっしゃいますか?」
水谷、と名乗ったその人は、丁寧に頭を下げる。
「スフラグループ……」
――あの男に近づくな。
その時、ふと石堂さんに言われた言葉を思い出す。けれど、その人は言うほど嫌な印象もなく、むしろ礼儀正しい紳士に見えた。
「あの、私に何か……」
水谷さんは、スフラグループの本社の人だと言っていた。本社の人に話しかけられる覚えはない。けれど、水谷さんは私をじっと意味ありげな目で見据えていた。
今日の空は一日中、分厚いどんよりとした灰色の雲に一面覆われていて、そのうち雪でも降ってくるのではないだろうかというくらい寒さが身にしみた。冷気が少しでも入ってこないように、グッと首元のマフラーを寄せて、スクランブル交差点の赤信号に立ち止まった。信号待ちをしている学生、会社員などみんな寒そうに身を縮こませている。
こんな寒い日は、どこかのカフェで温かいコーヒーでも飲みながら、ほっこりするのが一番だ。そう思い、交差点の信号が青に変わった時だった。
「あの、花岡里美さん、ですか?」
不意に後ろから自分の名前を呼ばれ、振り向くと……。
「あなたは……」
そこには今日、確か昼頃にスフラに来ていたあのインテリ風のビジネスマンが、少し息を切らせながら立っていた。
「すみません、急にお声かけしてしまって……私、スフラグループの水谷と申します。今日、スフラで接客して頂いたのですが……覚えていらっしゃいますか?」
水谷、と名乗ったその人は、丁寧に頭を下げる。
「スフラグループ……」
――あの男に近づくな。
その時、ふと石堂さんに言われた言葉を思い出す。けれど、その人は言うほど嫌な印象もなく、むしろ礼儀正しい紳士に見えた。
「あの、私に何か……」
水谷さんは、スフラグループの本社の人だと言っていた。本社の人に話しかけられる覚えはない。けれど、水谷さんは私をじっと意味ありげな目で見据えていた。