私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
石堂さんが実は本社の人だった。尚且つ副社長の身であることを隠されていたことが辛いんじゃない。胸が痛い原因はわかっていた。それは、石堂さんも私と同じ志で、コーヒー好きで、バリスタとしてコーヒーを注ぐ彼の姿はいつだって輝いて見えた。そして仕事に没頭する彼は、私を夢中にさせた。けれど、それはあくまでも仮の姿で本来の目的は、すべて自分の会社のため……。そして、石堂さんの指導はすべてマニュアル上のもので、石堂さんの本心ではなかったということだ。
そうとも知らず、彼を好きになって馬鹿みたいに告白までして、遊びのキスだってわかっているのに、石堂さんとキスしたことがいつまでも忘れられないでいる。今だって、あの時の感覚を思い出すだけで胸が疼く。けれど、石堂さんには、彼にふさわしい社長令嬢の婚約者がいるという事実が、そんな私に追い討ちをかけた。
「……私、馬鹿みたい」
なにもかもが滑稽に思えて、ふっと乾いた笑みがこぼれた。瞳に滲んだ涙がいまにも凍りそうだ。何度目かわからないため息をついたその時。
「みたい……じゃなくてお前は大がつく馬鹿だろ」
「っ――!?」
その声に、泣きそうになっていた顔が跳ね上がる。見ると、石堂さんが怒っているような不機嫌な表情を浮かべて私の前に立っていた。逃げ出すよりも前に石堂さんが、ずかずかと距離を縮めて歩み寄ってくる。
そうとも知らず、彼を好きになって馬鹿みたいに告白までして、遊びのキスだってわかっているのに、石堂さんとキスしたことがいつまでも忘れられないでいる。今だって、あの時の感覚を思い出すだけで胸が疼く。けれど、石堂さんには、彼にふさわしい社長令嬢の婚約者がいるという事実が、そんな私に追い討ちをかけた。
「……私、馬鹿みたい」
なにもかもが滑稽に思えて、ふっと乾いた笑みがこぼれた。瞳に滲んだ涙がいまにも凍りそうだ。何度目かわからないため息をついたその時。
「みたい……じゃなくてお前は大がつく馬鹿だろ」
「っ――!?」
その声に、泣きそうになっていた顔が跳ね上がる。見ると、石堂さんが怒っているような不機嫌な表情を浮かべて私の前に立っていた。逃げ出すよりも前に石堂さんが、ずかずかと距離を縮めて歩み寄ってくる。