私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「このクソ寒い中、ひとりで何やってんだ」

「……何もしてませんよ、ただ……ひとりになりたかっただけです。もう、帰りますから……すみません、いきなり店を飛び出したりして」

すっとベンチから立ち上がると、視界がぐらついて思わずバランスを崩しそうになった。

「おい」

咄嗟に石堂さんが私の腕を取って身体を支えた。

「すみません、ちょっと疲れてるみたいで……」

うまく笑えない。明らかに自分は作り笑いをしている。まともに石堂さんの顔を見られずに俯いていると、不意に取られた腕を引き込まれた。

「っ――!?」

すっかり冷え切ってしまった身体に、石堂さんの温もりがじわっと伝わってくる。けれど、今はその温もりさえも悲しい。

「水谷になんて言われた? 俺が本社の人間で、人材開発部の部長とスフラグループの副社長を兼任している。それだけか?」

まだ他にも言われたことがあるだろう?と言われているようで、私は下手に誤魔化すのはやめてその重い口を開いた。
< 186 / 294 >

この作品をシェア

pagetop