私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
部屋を見渡しながら言った彼女の目は、今まで再会を喜んでいた優しい表情ではなかった。どことなく冷たく、笑んではいるけれどそれは嘲りにも似ていた。

母を見た時、明らかな違和感があった。四歳の時の記憶ではあるけれど、母はこんなにセレブな雰囲気をまとうような人ではなかった。微かに香る香水も、どこぞのブランドものであるというような、独特の強い香りで噎せそうになる。

「椅子もないの? 地べたに座るのは嫌だわ」

そう言って、母は私のベッドに腰を下ろして足を組んだ。昔は座椅子に座って、ちゃぶ台を姉と囲んでいたというのに、今、私の目の前にいる母は、まるで別人のようだった。私は緊張の面持ちで、ローテーブルをはさんで向かいに膝をついて座った。

「里美、元気だった?」

「う、うん……なんとか」

実の母だというのに、なぜか目を合わせられない。怯えた動物のように、ちらちらと見て母の様子を窺う。
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