私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「わかっていると思うけれど……里美、あなた、立場をわきまえなさい。石堂さんの幸せ、智美の幸せを思うなら……お母さんの言ってる意味、わかるわね?」
まるで子供を諭すかのような柔らかな口調。それが寒気がするほど私の身の毛をよだたせた。
「石堂さんも智美もお互いに会ったことがなくて、まだ顔を知らないの。だから、石堂さんが智美を見たら、あなたじゃないかってびっくりするかもしれないわね」
母は楽しげにクスッと笑った。
今、私の目の前にいる母は、もう私の知っている母じゃない。金持ちと再婚し、贅沢を覚えた母は、昔のことなどすっかり忘れ去ってしまったようだ。
「石堂さんがもし、あなたの顔が好みだったとしたら、きっと智美のことも気に入るでしょ、あなたたちふたりって、大人になっても瓜ふたつなんだから、本当に親でも間違えそうだわ」
ふたりが出会って、婚約が取り決めになればもうなにもかも手遅れだ。けれど、私は石堂さんに一度振られた。自分の出る幕はもうないのかもしれない。でも、私の気持ちに応えてくれなかったとしても、どうしようもなく好きという気持ちは自分自身でも消せない。
追い詰められた私は、どうすることもできなくて、目元が熱を持ち始める。
母の前で泣いてはだめだ――。
まるで子供を諭すかのような柔らかな口調。それが寒気がするほど私の身の毛をよだたせた。
「石堂さんも智美もお互いに会ったことがなくて、まだ顔を知らないの。だから、石堂さんが智美を見たら、あなたじゃないかってびっくりするかもしれないわね」
母は楽しげにクスッと笑った。
今、私の目の前にいる母は、もう私の知っている母じゃない。金持ちと再婚し、贅沢を覚えた母は、昔のことなどすっかり忘れ去ってしまったようだ。
「石堂さんがもし、あなたの顔が好みだったとしたら、きっと智美のことも気に入るでしょ、あなたたちふたりって、大人になっても瓜ふたつなんだから、本当に親でも間違えそうだわ」
ふたりが出会って、婚約が取り決めになればもうなにもかも手遅れだ。けれど、私は石堂さんに一度振られた。自分の出る幕はもうないのかもしれない。でも、私の気持ちに応えてくれなかったとしても、どうしようもなく好きという気持ちは自分自身でも消せない。
追い詰められた私は、どうすることもできなくて、目元が熱を持ち始める。
母の前で泣いてはだめだ――。