私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
私はグッと唇を強く噛み締める。そんな私を見て、母が穏やかな口調で言った。

「でもね、お母さんとしては智美だけ幸せになるんじゃ、里美がかわいそうだと思って……里美にもお見合いの席を設けることにしたのよ」

「え……!?」

ど、どういうこと……? そんな、勝手に――。

「中小企業だけど、一応社長さんでね、年はちょうど三十ですって、ちょうどいいじゃない」

「お母さん! 勝手にそんなこと……」

「あなたも結婚して落ち着けば、石堂さんのことなんてきっぱり忘れられるわ」

それが、母の企みだった。きっと母は私の石堂さんへの気持ちをわかっている。私が邪魔しないように結婚させて、諦めるように仕向けているのだ。何も言えずに押し黙る私を、母は目を細めてほくそ笑んだ。

「段取りはもう組んであるの、明日、十時にここへ迎えを寄越すわ。ちゃんと準備しておいてね」

「え? 段取り……って?」

「あなたのお見合いに決まってるじゃない。善は急げよ、お相手の方とは正午に待ち合わせしてるから、そのつもりでね」

あ、明日――!?
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