私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
急な展開に頭が追いつけなくて、言葉が見つからない。

「お母さん! お見合いって……そんなの――」

「あら、もうこんな時間。運転手を外で待たせてるんだったわ」

母はまったく私の言葉に耳を貸そうとせずすっと立つと、座って俯く私を見下ろして言った。

「里美、あなたのその気持ちが、智美を傷つけるのよ。石堂さんにとっても……会社勤めの男はね、早く結婚して身を固めたほうがいいの。あなたは、そんなふたりを邪魔できる?」

冷たく言い放つ母に、私は抗議する言葉を飲み込んで、ただ唇を噛み締めるしかなかった。私がこれ以上、なにも言わないのだとわかると、母はわざとらしくため息をついて部屋を後にした。

石堂さんの婚約者が……お姉ちゃんだったなんて――。
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