私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
時計を見ると、九時三十分を少し過ぎたところだった。石堂さんに電話をかけようか、もたもたしているうちに、少し早めの迎えが来てしまったのだ。

「明日には復活してまた仕事しますから、すみません!」

『え? お、おい!』

私を呼び止める石堂さんの声を断ち切って、テーブルにスマホを置くと、玄関のドアを開けた。

「おはようございます。身支度は整いましたでしょうか?」

丁寧に挨拶をしてくるのは、昨夜、母に運転手と呼ばれていた男性だった。今日も同じようにピシッとスーツを着て、清潔な身なりをしている。

「おはよう、里美」

朝からバッチリと化粧をキメて、カシミヤ素材の茶色いコートを揺らし、母がにこやかに姿を現した。
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