私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「あら、あなたまだ着替えてないじゃない」

まだ部屋着を着ている私を、みすぼらしい物を見るような目で下から上へ視線を流す。

「さっさとこれに着替えなさい、お見合い用にワンピースを買ってきたわ、化粧は現地でするとして……」

そう言いながら、買ってきたばかりのワンピースの入った紙袋を私に手渡すと、母はズカズカと部屋の中へ入ってきた。運転手の男性は玄関の中で靴を脱がずにドアの前で待っていた。

母の買ってきた薄づきのピンクのワンピースは、シンプルでレースなどの飾りっけはなかったが、サテン生地で綺麗だった。こんな綺麗なワンピースなのに、着ていく場所は意図しないお見合いだ。沈んだ気持ちで着替えると、母はその姿を見て満足そうににこりとした。
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