私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「まだ、全員揃ってないの、申し訳ないけど、もう少し待っていただける?」

「かしこまりました」

そう言って、仲居の気配が消えると、母が小さくため息をついた。

「どうしたのかしら、遅いわね……」

「連絡してみなさい、もしかしたら道が混んでいるのかもしれない」

首をかしげる母に、おしぼりで顔を拭きながら、一ノ宮さんがそう言った時だった。

「遅れて申し訳ありません。お待たせしました」

その時、障子戸の向こうから、低い声がして私の身体がびくりと跳ねた。

き、来た――!

でも、なんか、どこかで聞いたことがある声だったような――。
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