私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
昔、姉とふたりで遊んでいる時、家を訪ねてきた近所のおばさんが将来何になりたいのかと聞いてきたことがあった。姉はもう自分の中で決めていたピアニストと応え、私はというと――なにも応えられなかった。
子供らしく女優になりたいとか、ケーキ屋さんになりたいとか、そう言っておけば可愛げもあったのかもしれない。
私は、幼いながらに姉と比較されるのが嫌で、自分の意見や考えていることを表に出すのが苦手だった。けれど、そんな優秀な姉を妬んで忌み嫌うというより、自分も大好きな姉のようになりたい。と、密かな願望があった。
――やりたいことをすればいいのよ、里美。
あの時、姉は私にそう言ってくれた。
そっか、あの言葉は……お姉ちゃんだったんだ――。
同じことを沙耶が言ってくれた時、不思議なデジャヴを感じた。遠い記憶の姉の言葉が私の中でみるみる蘇っていった。
近所の男の子にいじめられた時、必死に私をかばってくれた。失敗してジュースをこぼしてしまった時、優しく自分のジュースを差し出してくれた。
四歳から途切れた姉の記憶は、長い年月とともに薄れつつあったが、両親との思い出よりも断片的に私の中にまだ残っていた。けれど、いまさら姉に会いたいと思っても、なにも手がかりのない今となっては、不可能に近い。
子供らしく女優になりたいとか、ケーキ屋さんになりたいとか、そう言っておけば可愛げもあったのかもしれない。
私は、幼いながらに姉と比較されるのが嫌で、自分の意見や考えていることを表に出すのが苦手だった。けれど、そんな優秀な姉を妬んで忌み嫌うというより、自分も大好きな姉のようになりたい。と、密かな願望があった。
――やりたいことをすればいいのよ、里美。
あの時、姉は私にそう言ってくれた。
そっか、あの言葉は……お姉ちゃんだったんだ――。
同じことを沙耶が言ってくれた時、不思議なデジャヴを感じた。遠い記憶の姉の言葉が私の中でみるみる蘇っていった。
近所の男の子にいじめられた時、必死に私をかばってくれた。失敗してジュースをこぼしてしまった時、優しく自分のジュースを差し出してくれた。
四歳から途切れた姉の記憶は、長い年月とともに薄れつつあったが、両親との思い出よりも断片的に私の中にまだ残っていた。けれど、いまさら姉に会いたいと思っても、なにも手がかりのない今となっては、不可能に近い。