私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「あ、そうそう、ここ休憩室兼更衣室なんだけど……鍵がないから注意してね」

「え? 更衣室なのに鍵がないの?」

「ふふ、大丈夫だよ。私、まだ一度も着替え覗かれたことないから」

「お前の生着替えなんか興味ねぇよ」

いきなり聞こえてきた第三者の声にびくりとすると、ドアの向こうで石堂さんがしびれを切らせたように言った。

「真中、とっとと新人が着替えたら仕事内容教えてやれよ」

「ハイハイわかりました~。あ、髪の毛はちゃんとまとめてね、外で待ってるから」

「うん、ありがとう」

早く着替えなきゃ、石堂さんも仕事できないよね――。

長々とお喋りをしてしまったと思いつつ、私は早速憧れのバリスタの制服に身を通した。

なんだか恥ずかしいな――。

制服を身にまとうとそれなりに見える。けれど、中身はまったくの未経験。そのギャップに違和感を覚えながら、それでも今日から自分はバリスタとして頑張るんだ、と鏡の前の自分に気合いを入れた。
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