私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
ホールに出ると、怜奈が私の存在に気づいて振り向いた。

「いいね、似合ってるじゃん」

怜奈はパチパチと手を叩きながらそう言ってくれたが、石堂さんはちらっと私を見ただけで何も言わず、着替えるために休憩室へ行ってしまった。

「あー、石堂さんのことは気にしないでね、誰にでもあんな感じだから。あんな無愛想でよく店持てるねって不思議……あ、今言ったこと内緒ね」

怜奈が思っていることはよくわかる。私も同じことを思っているくらいだからきっと彼女とは気が合うのかもしれない。

あと三十分で開店時刻だ。まず、私の仕事は店内の掃除だった。

昔、高収入という理由だけで某大手会社の清掃員のバイトをしていたことがあった。ベテランのおばちゃんたちにいびられたり、掃除をしたそばから高飛車なOLにゴミで汚されたり、嫌な思い出しかない。けれど、どんな仕事をする上でも掃除は基本だ。

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