私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
よし! 綺麗になった――。

掃除が終わった頃、ふと視線を感じてカウンターに目をやると石堂さんがじっと私を見ていた。けれど、石堂さんは私と目が合うと何も言わずに目を逸らした。

「すみません、今終わりましたから」

きっと遅いと思われていたのかもしれない。急いで掃除用具を片付けてホールへ戻ると、こっちへ来い、と石堂さんに呼ばれた。

「お前、バリスタ志望だっけ? 早番シフトの時は掃除が終わったら真中とは仕事が別になるから」

「わかりました」

……と言うことは、ここからは石堂さんと仕事をするってことだよね――?

失敗しないようにしなければ……。そう思うと一気に緊張が高まって、あれこれと考えてしまう。

「お前、顔こわばりすぎ」

「へ? いだだっ」

ハッと我にかえると、石堂さんがいきなり私の頬をぎゅっとつまんだ。
< 45 / 294 >

この作品をシェア

pagetop