私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
――お前、俺の嫌いなタイプ。

これから気合い入れて仕事に望まなければ、と思っていた矢先に石堂さんからの辛辣な言葉。なぜあんなことを言われなければならないのかまったくわからない。確かに喋り過ぎたかもしれないけれど、鼻につくくらいものすごく喋りすぎたつもりもなかった。

あぁ、もう! 集中しなきゃ――。

そう思っても、石堂さんの言葉が私の気持ちをかき乱し、覚えなければならないメニューもろくに頭に入ってこない。

「里美、笑顔! 笑顔! 緊張してるのはわかるけど、わからなかったらなんでも聞いて」

「う、うん、ごめんね……ありがとう、怜奈」

「手が空いたらスイーツを補充してね」

石堂さんのことはとにかく置いておいて、今は仕事しなきゃ――。

嫌なことがあっても頭の切り替え次第でなんとか乗り切る。そう今までやってきたけれど、石堂さんに言われた言葉は、ひどく私の胸をえぐった。

スコーンを並べながら石堂さんをちらりと横目で見ると、グラインダーと呼ばれる豆挽き機で手際よく豆を挽き、エスプレッソを抽出しようとしていた。その流れるような手馴れた所作に、沈んだ気持ちとは裏腹に心臓がドキドキと高鳴りを覚えた。
< 49 / 294 >

この作品をシェア

pagetop