私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「コーヒーの粉が湯に浸っている間の温度が肝心なんだ。高すぎても苦味成分が出すぎるし、低く過ぎても味が軽くなって質が悪くなる」

「はい」

「後は、湯に浸りすぎると過抽出になって不味くなる」

完全に抽出が終わると、石堂さんはロートを外してコーヒーをカップに注いだ。

「飲んでみろ、その後に自分がさっき淹れたやつと比べてみな」

一目瞭然。石堂さんの淹れたコーヒーと私が淹れたものとでは見た目ではっきり違いがわかった。

わ、全然違う――。

石堂さんの淹れたコーヒーは深みのある茶色に香り高く、液も澄んでいる。それに比べて私のは、見ればコーヒーだとわかるけれど、どことなく色も濃すぎて焦げたような匂いがした。

「う、苦い」

石堂さんの手本であるコーヒーを飲んだ後に自分で淹れたものを飲んでみると、なんともいえない苦味が口に広がった。同じ淹れ方のように見えたのに、どうしてこうも違いが出てしまうのか不思議だった。
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