私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「確かに焦げた苦味っていうのもそれぞれの好みだからありだけどな、けど、コーヒー本来の苦味とは違う」

石堂さんは苦味で歪んだ私の顔を見るなりクスッと笑った。

あ、笑った――。

いつも仏頂面をしているからか、石堂さんの軽く笑った顔は新鮮で、ドクンと心臓が小さく跳ねた気がした。

「私の淹れたものは全然だめですね、もう一度家で勉強しなおしてきます。明日もまた教えてもらえませんか?」

私の申し出に、シンクでフラスコを洗いながら石堂さんが面倒くさそうに「ああ」と返事をする。

また、いつもの石堂さんに戻っちゃった――。

さっきの笑った顔、素敵だったな――。

石堂さんの笑顔、今度はいつ見られるのだろう。そう思っていると、不意に石堂さんが口を開いた。
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