私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「お前、今日注文を聞き間違えてただろ」

もしかして怒っているのか、石堂さんの表情には笑みはない。

「はい。すみません……石堂さん、やっぱり気づいてたんですか?」

「あの人、ちょいちょい見る顔だよ。けど、今日は機嫌が悪そうだったな」

それは自分のせいかもしれない。そう思って口を開こうとすると、石堂さんの癖なのか、腰に片手をあてて私を見ると言った。

「ここに来る客がどんな気分でどんな気持ちかはわからない。スタッフの些細なミスもいつもなら流せるのに、今日に限って頭にくることもある」

石堂さんが真摯な眼差しで、そう私に語りかける。無愛想で口数も少ないけれど、こうして話していると、石堂さんの深みのある低い声が身に染みる。

「けど、この店を選んでコーヒーを飲みに来たからには、最高のひとときとパフォーマンスを提供する。それが従業員の役目だろ?」

――それが従業員役目。
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