私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
この一杯で、なにもかも疲れが吹き飛ぶ。本当は、石堂さんが淹れてくれたコーヒーが一番なのだけれど。

自分にないものを持っている人に憧れを持ってしまうのは自然の事だと思う。

――いつまで里美はお姉ちゃんのことを羨ましがってるのかしら、悔しかったら頑張りなさいって、お姉ちゃんからも言ってやって頂戴ね。

――双子なのに、どうしてこうも違うのかしら。

ふと、脳裏に蘇ったその言葉。それは姉とは出来の違う私を影で疎ましがっていた母の言葉だった。昔、私がいないと思って母と姉がふたりで話しているのを、偶然聞いてしまったことがある。それは、幼心に深く傷つき、いまだにその傷跡が疼いている。

なんか、嫌なこと思い出しちゃったな――。

自分の中の劣等感を思い起こさせる遠い日の記憶にため息をついて、私は沈んだ気持ちをかき消すようにコーヒーをごくりと飲んだ。
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