私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
背中を向けられても、石堂さんの優しさがひしひしと伝わって、私は思わず顔を綻ばせた。

フラスコに水を入れて沸騰させる。あらかじめ準備しておいたフィルターをロートにセットして、挽いた豆を入れる。完全に沸騰したフラスコにロートを差し込むと予定通りに熱湯がロートに上昇してきた。

私は店のBGMが聞こえないくらいに集中し、ヘラで素早く数回ロートの中の湯と豆の粉をなじませた。石堂さんに言われた通りに過抽出にならないよう、頭の中で適した秒数を数えてから抽出する。完全に抽出し終わって火を消して、少しでも冷めないように素早くコーヒーをカップに注いだ。どことなく自分が先日淹れて失敗したコーヒーと色も香りも違う。

「あの、大丈夫でしょうか?」

「なにがだ?」

石堂さんは何も見ていないふりをして別の作業をしていたけれど、私がコーヒーを淹れている間、時々石堂さんの視線を感じていた。

「お前は客に出すコーヒーを味見してもらわないと自信がないのか?」

石堂さんは腰に片手をあて、目を細めると呆れたように言った。
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