私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
午後九時。

沙耶は閉店ぎりぎりまで店でゆっくりして、実家で落ち着いたらまた連絡するといって帰っていった。雅人さんは早めに仕事を切りあげてもいいと言ってくれたけれど、結局、私は早めにあがることなくいつものように仕事をした。自分の友人が来ているからといって特別扱いはなんとなく気が引けてしまったからだ。

沙耶、またね――。

ブラインドとclosedの札を下げると、大切な友人にまた今度いつ会えるのだろうかと少しセンチメンタルな気分になってしまった。

有線を切った店内はしんと静まり返っている。雅人さんは用事があると先に帰宅し、お客もいない。再び石堂さんと私のふたりきりの空間が訪れる。

「お疲れ様でした。あの、石堂さん、今日はありがとうございました」

「なにが?」

レジの金銭確認をしながら石堂さんは相変わらずぶっきらぼうに答えた。

「エメラルドマウンテンのアドバイスです」

石堂さんの言葉がなかったら、おそらくエメラルドマウンテンは思いつかなかった。改めて勉強不足だと思い知らされた。
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