私、それでもあなたが好きなんです！～悩みの種は好きな人～

「石堂さん……」

今までの石堂さんの言動を思うと、それは予想外の行動だった。

今の、なんだったの――？

石堂さんが、私に触れた――。

そう思うと、あまりにも信じられなくて頬に残る感触と温もりが嘘のように思えてしまう。その手は温かくて、辛辣な言葉の裏側にある温もりのようだった。思わず石堂さんの手に自分の手を重ねてしまいたい衝動に駆られてしまったけれど、その手を捕らえるには遅すぎた。

私は石堂さんの嫌いなタイプらしい。けれど、それとは裏腹に私の気持ちはどんどん石堂さんにのめりこんでいく。きっと彼に触れたら痛い思いをする。そう警鐘が鳴っているのにその思いは留まることを知らない。

すると、石堂さんが帰り支度を整えながらぽつりと言った。

「今のところ、お前は俺の技術をコピーしただけだ。それを自分のものにしろ。それができる自信があるなら、今後バリスタとして仕事すればいい」

「ほんとですか!?」

その言葉が嬉しくて、私はつい前のめりになる。

「お前、近すぎ」

「っ!?」

我に返ると恥ずかしくなるくらいの近距離で、石堂さんは動じることなくじっと私を見据えていた。