私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
第四章 涙のナポリタン
あと二週間もすればクリスマス。

恋人もいなければ特に予定もない。去年は味気ないクリスマスを元彼と過ごした。それでも自分にとっては楽しみで、ひとりで浮かれていた。いま思えばそんな思い出も、遠い昔のように思えてしまう。

街全体がイルミネーションで着飾っている景色を見ると、季節を感じるとともにひとりでいる虚しさに気持ちが沈んでいってしまう。それにクリスマスは私にとって忘れもしない母と姉の別れの日でもあった。クリスマスに離婚して出て行くなんてどこまで自分勝手な親だったのかと思う。朝起きて、毎年枕元に置いてあるはずのプレゼントの代わりに

“元気でね、絶対また会えるから”と走り書きされた姉からのメモ紙があった。

早くしなさい!と急かされた姉がせめて最後に何か残そうとしてくれたことを思うと、きっと、姉も両親の離婚のことは直前まで知らなかったに違いない。

また会えるっていつ会えるのよ――?

今日は、朝と夜と通しで仕事が入っている。朝の仕事が終わって、クリスマスの苦い思い出をふと巡らせながら休憩室でひとり座っていると、いきなりノックもなしに石堂さんと雅人さんが部屋に入ってきた。
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