私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「昔からだけど、変にこだわりが強くてね。あいつの父親は僕の兄貴にあたるんだけど、融通の利かないところはそっくりだよ、困ったことにね」

「でも、そういうところが石堂さんの強さだと思います」
人の機嫌をいつも窺って、本当の自分を出せない性格の自分に比べたら、石堂さんは強い人なのだと思ってしまう。

「私になにかできることはありませんか?」

石堂さんのために役に立ちたい――。

そんな思いがふつふつと沸き起こる。

「私、石堂さんのために頑張ります。あ、もちろんこのお店のためにも」

「花岡さん……」

雅人さんは私の言葉に嬉しそうに顔を緩めた。

「本当に君をこの店に迎えてよかった。花岡さんなら慧を助けてやれる。君ならね」

私なら――。

石堂さんに何ができるのだろう。そう考えてみるけれど、すぐには思いつかなかった。つくづく無力な自分が嫌になる。

バリスタになるために手とり足とり教えてもらっているし、私もできればなにかしたい。そんな一心の思いで、たっぷりすぎるくらいの休憩時間に、私がまず向かったのはこの界隈でも大型の書店だった。
< 95 / 294 >

この作品をシェア

pagetop