【短】コンソメスープが重たくて


 彼も常連客の一人。
 いつも通り、カウンターの隅に座った。


 瑠美も厨房に入り、働きながら彼を見つめる。


 短髪は乱れがなく、着ているスーツにもシワがない。


 脱いだジャケットを隣の椅子に掛けると、すぐにカバンの中を探り始める。
 営業をしているからなのか、カバンはいつも重そうだ。


 やっと見つけ出したのは文庫本。


 注文した料理がくるまでの間、彼はいつも読書をする。名前も知らない常連客だが、瑠美は長い間見てきたからわかっていた。

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