【短】コンソメスープが重たくて


 長かったような短かったようなカフェ生活がついに終わる。
 そう思うと瑠美は切なくなる。



 ――――でも、こんな脱線した人生も悪くないかも。嫌なこともあったけど、それでも充実していたから。



 瑠美はふと、カウンター席から立とうとしない男性客に目をやる。
 帰り支度をするわけではなく、ただ黙って下を向いていた。



「……あ、あの……?」



 瑠美が恐る恐る声をかけると、彼はやっと顔を上げた。


 その瞳が揺れるように潤んだから、瑠美は驚きでどんな言葉をかければよいか迷う。



「瑠美さん。お疲れ様」

「……え」

「今日で終わるんでしょ?」



 彼は壁の方に一度目をくれ、そこにある閉店を知らせる紙を睨む。

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