【短】コンソメスープが重たくて


 夕食を振る舞おうと、瑠美は時間をかけて食事を用意した。


 唐揚げ、サラダ、スープなど。
 特にスープはこだわっていて、野菜を煮込み一から本格的に作ったコンソメスープ。



『お前、馬鹿じゃねえの?』



 瑠美の住んでいる狭いアパートに、彼の声が響く。
 その時の引き攣った表情は忘れられないものとなった。


 喜んでもらえると思っていた瑠美は、驚きと戸惑いで声が出せない。



『普通にレストラン行けばいいだろ』

『でも……』

『お前、重すぎる。もう、付き合ってらんねえよ』



 激しく叩かれた古いテーブルが揺れ、料理が皿から飛び出す。まるでスローモーション。


 自分で作ったものが簡単にテーブルから落ちるのを眺めていた。


 最後に瑠美が見たのは、去っていく彼ではなくて零れるコンソメスープだった。

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