sugar、sugar、lip
近寄りたいキョリと拒絶
「……芳川さん」


「ちょっといい?」


休み時間になるなり現れたわたしに、面食らったように快登くんが席から立ち上がった。




廊下の隅で向かい合って話すわたしたち。


「昨日は……ごめん。俺もイライラして……」


呼び出したわたしより先に話を切り出したのは快登くんの方だった。



「でも、最近の奏大……よく喋ってるから気になって」



快登くんの言いたいことはわかるよ。



だから、



「米倉くんのアドレス教えて」


「……えっ?」


「口で喋らなきゃいいんでしょ? だから教えてよ」



メールでもなんでも……使えるもん使って喋るんだよ。



「負担かけないから」


わたしに出来ること、これくらいしか思い浮かばなかった……。



「……近づくのを辞めるって選択肢はなかったんだ」


あっ……。



もしかして、昨日のアレって遠回しにほのめかされてたのかも……。



「思いつかなかった」



バカ正直に答えるわたしに、目の前の快登くんは何故か声を上げて笑い始めた。


「負けた……」




何に?



わたしの神経の図太さとか……?
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