sugar、sugar、lip
「……米倉くんと付き合える物好きな元カノに貰ったんだ」


精一杯返した皮肉も、どこか力無く聞こえる。


手のひらに乗ったままのマフィンをじっと見つめる。



米倉くんも黙り込んで……、



わたしたちに不思議な沈黙が流れた。



「……ねぇ」


「んっ?」


「どんな娘?」



沈黙を破ったわたしの言葉に、米倉くんはしばらく黙ったままで……、



ただ一言、



「イイコ」



って、答えた。




イイコ……。




天地がひっくり返っても自分に向けられることのない言葉だ……。



「どんな風に?」


「黙って隣に居るだけで落ち着く奴」



散々男を引っ掻き回してたわたしとは、ホント正反対……。



「なんで別れたの? やっぱりフラれた?」


「やっぱりって何だよ……」



皮肉を混ぜないと、上手く喋れない自分が恨めしい。



呆れ顔を浮かべながらも、米倉くんは相変わらず静かに答えていく。



「花鈴と付き合ってた間に、病気が悪化した」



淡々と語る米倉くん。



その表情は、



驚くほど諦めに満ちていて、



それなり、

わたしは目が離せなくなった。
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