sugar、sugar、lip
「アイツが今付き合ってる奴、辛い時期のアイツ励ましてた奴なんだよ」




辛い時期ってのは、米倉くんが入退院繰り返してたとき……。


「アンタ……その彼に頼んだんじゃあ……」


「……なんでわざわざそんなことすんのさ。好きなのに」


「……だって」



好きなのに別れちゃう人なんだもん……。


やりかねない……。


「そいつから言いに来た。幸せにするから譲れって」


「……」


返す言葉なんて見つからない……。


見つかるはずないよ……。


「そして、譲っちゃった情けない俺」



なんで笑うの?


やめてよ……。




見てらんないから……。



「……バカじゃない」

「……おまえ、今それ言うか」



「だって! なんでそんなに平気そうなの!」



わたしが泣いたって仕方ない……。



わかってるのに、涙はドンドン溜まっていく。



「平気? ……見せてるだけじゃん。俺だって譲りたくなかった」



視界が滲んで、よくわからないけど……


きっと、米倉くんの表情は変わってない……。



それが余計に辛かった。




「こればっかりは、俺一人でどうにも出来ないからな」
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