sugar、sugar、lip
貧血の体と叫ぶ声
奏大とわたしは、
教室では一言だって言葉を交わしたりしない。



それでも放課後の音楽室で過ごすわたしたちのキョリは、



確実に近づいているって思う……。




斜め前に背中を見るのはもう飽きた……。



近いのに遠い教室でのキョリが焦れったく、



隣で過ごす放課後が待ち遠しい……。




逸る気持ちが貧血気味の体に元気を与える。



昨日、奏大に抱き締められて浮かれてたのかもしれない……。




急いで駆け上がった音楽室への階段。



階段の中盤に差し掛かろうとしたところで、



「っ!!」



軽い目眩と共に、


わたしの体は、



後ろに引き寄せられ、



一瞬、宙に浮く。




落ちるッ!!




頭が真っ白になって、全身が凍り付いた……。




一瞬飛んだ意識の中で、



「静葉っ!!」



恥ずかしいくらい大きな声で、




奏大がわたしを呼んだ。




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