sugar、sugar、lip
奏大が受け止めてくれたおかげで、わたしは貧血用の点滴を打たれただけ。



なのに……、



「米倉くん、しばらく入院することになったわ」



わたしのせいで……、



「治療終わったから会えるみたいだけど……」




奏大が入院しなきゃいけなくなったのに……、



どんな顔して会えばいいの?



「……いえ」



こう答えたわたしは、担任に一礼して病院を後にする。




自分の体が空っぽになったみたいにフワフワしてて、



頭の中は、



階段の下で抱き締められた奏大の感触と、



鮮やかな程の赤い血で一杯だった。




帰り道を歩いてるわたしを、




すれ違って行く人みんなが振り返っていく。




そりゃそうか……。


わたし今、




泣きながら歩いてるんだもんね……。




泣いたって奏大が良くなるわけじゃない。



それでも涙は止まらない……。






不安な気持ちで押しつぶされそう……。



ごめんなさいも、
言わずに逃げ出したわたしに……、








奏大を好きでいる資格なんて無いよ……。
< 59 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop