sugar、sugar、lip
「アンタが奏大を入院させたなんて思ってないから」


「えっ……?」


「アンタが……何も言わずに奏大の前から居なくなったりするから……アイツは傷ついてんだ」



快登くんが悔しげに唇を軽く噛みしめた。



わたしが何も言わないで帰ったから……、


今日だって……、



会いに行く勇気が無かったから……、



わたしが奏大を傷つけた……?


「だって! わたしのせいで奏大がっ!」


「米倉くんそんなこと思って無いよ。……アンタに何事も無くて良かったって安心してた」



どうして……。



こんな時まで、わたしの心配が出来るの?



自分の方が大変なのに……、
わたしのことなんて放っとけばいいのに……。



「何泣いてんの。そんなキャラじゃないでしょ」


こう言って快登くんが腕を引いてわたしをベッドから立ち上がらせる。



「奏大から逃げんの?」


「……逃げないに決まってるでしょ」



やや睨みながら答えるわたしに、
快登くんはニヤリと不敵に笑い、



「さっさと行けば? フラれても哀れんで慰めたげるから」



わたしの背中を押してくれた。



一言多いけど……。



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