sugar、sugar、lip
「ごめんな。独りにして」



こう言った奏大の腕に更に力が込められる。



違うよ、奏大。



「独りじゃないよ。ずっと二人で待ってた……」



奏大の背中に回してた腕に力を一杯込めてお返しする。



奏大の匂い……、



奏大の体温……、



ずっと待ってたよ。



「ありがとな。……待っててくれて」



ゆっくり髪を撫でてくれる感触に目を閉じた。



手のひらから奏大のありがとうが伝わってくるみたい……。



「米倉……静葉」



ベッドの上のネームプレートにそっと手を伸ばしながら、奏大が小さく呟く。




「奏大とわたしの子どもだもん。米倉静葉として産みたかったの……どうしても」



なんて身勝手だよね……。



そう思って不安げに奏大を見上げたら、



奏大はすっごい嬉しそうに笑って、



「ありがとう」



って言って、



おでこにキスをくれた……。



「奏大……」


「んっ?」


「おかえり」



奏大の唇にそっと近づきながら呟く。


「ただいま」




小さな小さな答えと入れ替わりに、



とろけるほどの甘い口づけが全身に広がった……。
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