Three~となりの王子~
「もう、笑わないでって言ってるのにぃ」

あたしはばたばたとその場で足を踏み鳴らした。

だめだ。

忍の前だとあたしはどんどん幼くなっていく。

ママのことを気持ち悪いなんて言えない。

忍があたしを見る目はいつもとろんととろけていて、あたしはなんだか、完璧な女の子になった気がしてしまうのだ。


おんなのこってなんでできてる?

おさとうとスパイスとすてきなものなにもかも

そんなもんでできてるよ


いつだったか、忍が読んで聞かせてくれた、マザーグースの絵本のような、とびきりすてきな女の子に。

ときどきあたしは、忍自身が好きなわけじゃなくて、忍といっしょにいる自分が好きなだけなんじゃないかって錯覚してしまう。
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