Three~となりの王子~
「女の子が喜ぶようなテクニックを知ってるなら、どうしてさっきあんなこと言ったの」
いつまでも笑い続けてる忍が気に入らなくって、あたしは意地悪を言ってやりたくなった。
「あんなことって?」
道路の上にしゃがみこんだまま、忍があたしを見上げた。
髪の毛がさらさらとこぼれて、きれいな顔の上にふりかかる。
ほんのり笑いを含んだ唇、いたずらっぽい瞳。
こ、こいつ、あたしを誘惑しようとしてる!
思わずうろたえそうになって、あたしは両足を踏ん張った。
こんな小手先のテクニックに落ちてなどやるものか。
だってこんなのに騙されたら、忍が連れてる他の女の子たちと変わんなくなっちゃう。
それだけは絶対いやだ。
幼なじみのプライドなのか、女の意地ってやつなのか、それとも「あたしは特別だ」という浅ましい優越感からくるものなのか、たぶんその全部をひっくるめた感情なんだと思う。