Three~となりの王子~
だからあたしはつんと忍から顔をそらして言った。

「君はハンバーグとかそういうこと。あんなこと言ったら、相手が傷つくってわかりきってるのに」

「だったら嘘ついたほうがよかった?」

ちらっと忍を見る。

うっ、まだすけこましのテクニックを駆使してる。

「嘘はもっとだめ」

あわててそっぽを向いて、あたしは言った。

「忍が嘘つきになるのはあたしがいやだからだめ」

「どうしろって言うんだよ」

「そんなの自分で考えなよ。そういうの得意じゃん。のらりくらりと人をはぐらかすの」

「ひでぇなあ」

「ひどくない。事実です」

「ひどいよ」

そこで忍は立ち上がった。

不穏な気配を感じてあたしは忍を見上げた。息を飲む。

さっきまで笑いを含んでいた声も、顔も、瞬間的に凍りついてしまっていた。
つめたい目。感情がまったく読めない。

どうして?
なんでそんな顔をするの?

「おまえならどうする?」

「え?」

「『マカロニグラタンは売り切れました』。さあ、どうする?」

切りつけるように――まるであたしを憎んでるみたいに、忍が訊いた。
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