Three~となりの王子~
距離
バイトがあるから、という忍と家の前で別れ、あたしは部屋に戻った。
ひさしぶりに忍とゆっくり話ができたのに、胸のあたりにもやもやしたものが残って、その夜はなかなか眠れなかった。
ベッドから抜け出して、机の上の、キャンディの空き缶に入れてあるビーズをひとつつまんで、窓を開ける。
隣の家の窓に向かってビーズを投げつける。
こつん、と硬質な音がしてビーズは闇に吸い込まれていった。
ボイルカーテンの向こうで影が動いた。
「ねえ、ちょっと、樹。起きてるんでしょ。窓開けて」
あたしはその影に向かって、必死で手を振った。
けれど、樹は動こうとしない。
あたしはもう一度、ビーズを投げつけた。
無視された。
またひとつ投げた。
無視された。
なんなの、あいつ。
あたしはやけになって、節分の豆まきの要領で盛大にビーズをまきちらした。
おばさん、ごめん。明日、お庭の掃除しときます……。
「あーもう、なんなんだよ、おまえ。うぜえ。死ぬほどうぜえぞ」
やがて、しびれを切らしたように樹が窓を開けた。
勝った、と思った。
ひさしぶりに忍とゆっくり話ができたのに、胸のあたりにもやもやしたものが残って、その夜はなかなか眠れなかった。
ベッドから抜け出して、机の上の、キャンディの空き缶に入れてあるビーズをひとつつまんで、窓を開ける。
隣の家の窓に向かってビーズを投げつける。
こつん、と硬質な音がしてビーズは闇に吸い込まれていった。
ボイルカーテンの向こうで影が動いた。
「ねえ、ちょっと、樹。起きてるんでしょ。窓開けて」
あたしはその影に向かって、必死で手を振った。
けれど、樹は動こうとしない。
あたしはもう一度、ビーズを投げつけた。
無視された。
またひとつ投げた。
無視された。
なんなの、あいつ。
あたしはやけになって、節分の豆まきの要領で盛大にビーズをまきちらした。
おばさん、ごめん。明日、お庭の掃除しときます……。
「あーもう、なんなんだよ、おまえ。うぜえ。死ぬほどうぜえぞ」
やがて、しびれを切らしたように樹が窓を開けた。
勝った、と思った。