Three~となりの王子~
「こんな夜中になにやってるんだよ」

やがて、車から降りてきた忍があきれたようにこちらを見あげた。

それを聞いて、あたしはなぜかほっとした。

よかった、樹といるとこ、見られてなかったんだ、と思って。

なんでそう思うのかはわからなかった。だけど、見られちゃいけないような気がした。


「忍こそ。こんな遅くまでどこでなにしてたの」

「まあいろいろと、ね」

そう言って、忍は肩をすくめた。

「もう寝ろよ。おやすみ」

そうしてすぐに、家の中に入って行ってしまった。

夜の中にひとり取り残されて、あたしはもう一度、片腕を闇の中に伸ばしてみた。

子どものころより、隣の窓が遠い。
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