Three~となりの王子~
思わず樹から目をそらし、涼子にSOSを送ると、涼子は心得たりといったかんじで樹ににこやかに笑いかけた。

「どうも、はじめまして。あおいのクラスメートです。お噂はかねがね、この子から聞いてます」

あたしのことをババア呼ばわりしたくせに、涼子だってかなりババくさい挨拶をしてる。お噂はかねがね、なんて余計なことまで言ってるし。

「ああ、はあ、どうも」

もごもごと口の中だけで言って、樹はどかっとあたしの隣に腰をおろした。

「なんで座るのよ?」

「なんだよ、悪いのかよ」

「……さっきの女の子はどうしたのよ」

「だれが言うか、おまえごときに」

「あっそう。あたしだって別に興味ないもん。あんたごときのことなんて」

「それはよかった。おれだって、わざわざ説明したくねえもん、おまえごときに。あいつ
はただのクラスメートでたまたま電車がいっしょになっただけだなんて、なんでおまえごときに」

「その割にはあの子、あたしのことすごい目でにらんできたけど。正直気分悪いんだよね、あんたごときのことでにらまれるなんて。まあ別にどうでもいいんだけど、しょせんあんたごときのことだし」

けたたましい勢いで言い争いをはじめたあたしたちを見て、涼子がぶっと吹き出した。

「なによ」
「なんだよ」

あたしと樹の声が重なった。それが余計に涼子のツボに入ったらしい。げらげら腹を抱えて笑っている。
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