Three~となりの王子~
こんな高い金出してコーヒー飲むぐらいだったら缶コーヒーで済ます、と言い張る樹に、
「だったらあたしが奢るわよ。なんでも好きなもの頼んで」
と涼子がメニューを差し出すと、
「なんで?」
長い前髪の下から、樹が鋭い目をあげた。
「そうね、お近づきのしるしってことで」
「意味わかんねえよ。なんかの罰ゲームでもないのにだれかに奢られるなんてきもちわり
ぃし、おれは水でいい」
涼子は目を丸くして、まじまじと樹を見た。それからその視線をあたしに移して、意味ありげにふっと笑ったのだった。
結局、樹はなにも注文しないまま、ほんとうに水だけですませてしまった。最低だと思う。人として。
いくらお金がなくったって、お店に入ったら最低でも一品注文するのがマナーなのに。
だけど、もし樹が、たとえコーヒー一杯だったとしても、初対面の涼子に奢ってもらっていたりしたら、あたしはもっと幻滅していた。「おう、わりぃな」とあたりまえのようにしても、「どうもすいませんねえ」と必要以上に卑屈な態度でも、どちらもいやだった。それだったら、どれだけ貧乏くさくても水だけですませてくれたほうがいい。
「だったらあたしが奢るわよ。なんでも好きなもの頼んで」
と涼子がメニューを差し出すと、
「なんで?」
長い前髪の下から、樹が鋭い目をあげた。
「そうね、お近づきのしるしってことで」
「意味わかんねえよ。なんかの罰ゲームでもないのにだれかに奢られるなんてきもちわり
ぃし、おれは水でいい」
涼子は目を丸くして、まじまじと樹を見た。それからその視線をあたしに移して、意味ありげにふっと笑ったのだった。
結局、樹はなにも注文しないまま、ほんとうに水だけですませてしまった。最低だと思う。人として。
いくらお金がなくったって、お店に入ったら最低でも一品注文するのがマナーなのに。
だけど、もし樹が、たとえコーヒー一杯だったとしても、初対面の涼子に奢ってもらっていたりしたら、あたしはもっと幻滅していた。「おう、わりぃな」とあたりまえのようにしても、「どうもすいませんねえ」と必要以上に卑屈な態度でも、どちらもいやだった。それだったら、どれだけ貧乏くさくても水だけですませてくれたほうがいい。