Three~となりの王子~
「ちょっと見た目はちゃらいけど、いいじゃん、次男」

別れ際、涼子があたしにだけ聞こえるように耳打ちしてきた。

「どこが。たいしたことないよ、あんなやつ」

と口では言いながら、私はうれしかった。涼子はめったに人を褒めないから。涼子が「いい」と認めたのなら、樹はほんとに「いい」んだろう。なんだか誇らしい。

お店の前で涼子と別れて、あたしと樹は並んで歩き出した。

「おまえの友だち、なんかすげーな」

去っていく涼子の背中をふりかえって、樹がしみじみとつぶやいた。

「すげー美人だけど、あんまり近寄りたくないかんじだな。彼氏とかいねえだろ」

「それを言うなら近寄りがたいかんじでしょ。彼氏はいないけど、それは涼子につりあうだけの男がいないからよ」

「いやちがう。近寄りたくない。世の中の男の大半はそう思うぞ、あれは。平気なツラしてあの女に寄ってくやつがいたとしたら、そいつはよほどのバカか、自信過剰なやつだろ」

あたしはなんだかむっとしてしまった。

「樹に涼子の魅力はわかんないよ。どうせあんたは、そのへんのギャルっぽい子が好きなんだもんね」

「だからさっきのはちがうって言ってんだろ」

「なによ、あんなに顔近づけてこそこそと話したりしてさ、いやらしい」

思いっきりとげとげしく言ってやると、樹は一瞬きょとんとして、それから唇を歪めてにやりと笑った。

「おまえ、やっぱり妬いてんじゃねえのか?」

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