Three~となりの王子~
それからワインをちびちび舐めながら、樹と司がゲームをやってるのを眺めていた。

プレステがお友だち! ってぐらい常にコントローラー握りしめてるくせに、野球ゲームでも、格闘ゲームでも、レースゲームでも、樹は司にめためたにされていた。

「あーもぉ、おまえむかつく!」
「おにいが弱すぎるんだよ」
「あーあーあーあーうるさいうるさいうるさいうるさい」

兄弟ゲンカ勃発か? と樹のベッドの上に勝手に横になっていたあたしは、とっさに体を起こした。

すると、

「はい」

こちらをちらりとも見ずに、司がコントローラーを投げてよこした。

「あ、ありがと」
あたしはあたふたとベッドから降りて、樹の隣にちょこんと座った。司はそのまま枕の上に顔を突っ伏して、ベッドでぐでーんとしてしまった。

なんでだか、あたしは真っ赤になってしまった。お酒のせいもあったと思うけれど、それとはべつに、かーっと熱いものがこみあげてきてあたしの顔をかっかとほてらせた。

ベッドからは樹のにおいがしていた。シーツに顔を押しつけて、胸いっぱいにあたしはそのにおいを嗅いでいた。

いま、そのベッドの上には、あたしのぬくもりがまだ残ってる。それから、もしかしたらあたしのにおいも。

司はどんな思いでそのぬくもりを、においを、感じているんだろう。
そう思ったら、かーっときた。

そんな司をちらりと見やって、

「お子様め、もう酔ったか」

と樹は勝ち誇った顔をしていたけれど、ゲームでめためたに負かされて、なんであんな顔ができるんだろう。
ばかなんじゃないだろうか。
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