Three~となりの王子~
おそろしいことに、そのあとの記憶があたしにはまったくない。

気づいたら樹のベッドで寝ていて、部屋には樹も司もいなかった。

二日酔いでがんがん痛む頭で、昨晩あったことを思い出して、あたしは絶句した。

樹とキス、しちゃった――?!

どうしよう、どうしたらいいんだろう、と布団にくるまって真っ青になっていると、ドア
をノックする音がして忍が顔をのぞかせた。

「おはよう、目、覚めたか?」

あたしはぼう然として、なにも答えられなかった。

「まだ寝ぼけてんのか? そろそろ起きて家に帰ったほうがいいぞ。おばさんたちが心配するだろ」

そう言ってあたしを見おろす忍の顔は、なぜだかとてもさびしそうだった。

布団からは、樹のにおいにまじって、アルコールのにおいと、司のにおいがしていた。





樹があたしを避けるようになったのはそれからだ。

あのことをおぼえているのか、あのあとなにがあったのか、あたしは樹に確認できないままでいる。

このことは涼子にも話していない。
あたしだけの秘密だ。


あのときのキスを思い出すたび、頭の裏がじーんとしびれて、たまらない気持ちになる。

どうしてあんなことしちゃったんだろう。

どうしてあんなことになっちゃったんだろう。

後悔する気持ちといっしょに、甘い気持ちがこみあげて、あたしはどうしていいのかわからない。


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